浮揚させた0.5トンの磁石で惑星プラズマを再現する
Nature Physics
2010年1月25日
惑星の磁場と太陽風の相互作用によって生じるプラズマに似た、高温高密度プラズマが生み出されたことが、Nature Physics(電子板)で報告される。この装置によって、惑星磁気圏のダイナミクスを調べる手段が得られるだけでなく、核融合発電を実現する新たな方法も可能になるかもしれない。
プラズマを作るのに用いられた従来とは異なるこの装置は、浮揚させた0.5トンの超電導磁石を用いており、宇宙プラズマではしばしばみられるが、これまで実験室ではみられたことのない特異な効果を再現する。「乱流ピンチ」とよばれるこの効果によって、高温プラズマ中心部の密度を著しく増大させることが可能となる。プラズマ中の乱流は、プラズマの密度や温度の変動を和らげることが多く、その結果プラズマの中心部の密度が小さくなるはずである。しかし、惑星の近傍で作られる磁場などの特定の磁場配位によってプラズマが閉じ込められると、乱流によって逆の効果が生じ、密度勾配に逆らって粒子を拡散させることがある。
M Mauelたちは、このような乱流によって生じる密度の増大を、より大きな装置で実現できれば、トリチウムを含まないプラズマで核融合反応を持続させるのに必要な条件を再現できる可能性があると考えている。トリチウムは2つの水素同位体の1つで(もう1つは重水素)、現在フランスのカラダッシュで建設されている国際核融合実験炉ITERで起こるであろう核融合反応に不可欠である。しかし、トリチウムは放射性物質であり、天然には存在しないので、トリチウムを生成し取り扱うことは、核融合発電所を開発する際に直面する重要な技術的課題である。
doi:10.1038/nphys1510
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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