Research Press Release
何も飲まずに一晩切り抜ける
Nature Neuroscience
2010年3月1日
夜眠っているときに脱水状態になるのを防ぐために体内で起こっている変化が、Nature Neuroscience(電子版)の研究で報告されている。
体が保持する水の量は、脳の視床下部にある神経分泌細胞が放出するバソプレッシンというホルモンが調節する。この分泌細胞は、血中の水分濃度を観測する浸透圧受容細胞により活性化される。視床下部には体内時計の中枢である視交叉上核を形成する細胞も含まれる。視交叉上核にある細胞の活動の日周期変化は、空腹を覚える、眠くなるなど体のあらゆる日周リズムに影響を与える。
E TrudelとC Bourquは、この3種類の細胞どうしの結合を調べた。深夜には水を感知する浸透圧受容細胞とバソプレッシン放出神経分泌細胞の結合が強まり、ほんのわずかな脱水でもバソプレッシンの大量放出が起こる。夜間のこの時間には、視交叉上核の活性も低下する。視交叉上核細胞の発火を人工的に増やしたところ、浸透圧受容細胞と神経分泌細胞の結合は弱まった。
これらの結果から、視交叉上核の活性化は浸透圧受容細胞と神経分泌細胞の結合を弱める「ブレーキ」のように働くことが示唆される。昼間ならば水分濃度の低下は水を少し飲むだけで改善できる。しかし夜眠っている間は視交叉上核の活性を下げ、「ブレーキ」をゆるめて、水の貯留を増やせるようになる。
doi:10.1038/nn.2503
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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