Research Press Release

細胞老化の決定因子

Nature Cell Biology

2010年7月26日

酵母細胞では、膜に存在する輸送体ファミリーの1つの機能低下が、分裂寿命にかかわっているらしい。この研究はまた、このタンパク質ファミリーが多細胞生物での細胞老化に影響を与えている可能性も示唆している。

我々の体内のほとんどの細胞と同様に、出芽酵母の細胞も20~30回しか分裂することができない。だが、いわゆる「分裂寿命」とよばれるものを制限している因子の本体はまだわかっていない。Liたちは、一部の多剤耐性(multidrug resistance;MDR)関連タンパク質は、母細胞とそこから新たに出芽した娘細胞の間で、遺伝のされ方が異なることを見いだした。新たに産生されたタンパク質は娘細胞のほうに分配され、古いタンパク質プールは母細胞に付着したままになる。このことが、時間が経って母細胞が「老化」するにつれてMDR関連タンパク質の量が減ったり、あるいは活性が低下したりするのにつながるのかもしれない。Liたちは実際に、より年をとった細胞ではポリアミン輸送体が減っていることを明らかにしている。細胞の健康状態維持に重要なこのようなタンパク質の減少は、細胞寿命に影響する可能性がある。

この考え方と一致する結果として、一部のMDR遺伝子を欠く酵母変異体では、分裂寿命がより短くなるが、このような遺伝子のコピー数を増やしてやると分裂寿命が長くなることも、著者たちは明らかにしている。

doi:10.1038/ncb2085

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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