Research Press Release

造血幹細胞を動員

Nature Medicine

2010年9月27日

細胞表面の上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害すると、造血幹細胞(HSC;あらゆる種類の血液細胞を生じる幹細胞)の動員が促進されることがわかった。EGFRを標的とする複数の薬が現在実際に臨床に用いられているので、今回の発見は、HSC移植を必要とする病気の治療に直接かかわってくる可能性がある。

ある種のがんをはじめ、血液の病気の患者は、HSC移植を必要とする場合が多い。HSCは数が少なく、骨髄に存在するため、移植に十分な量のHSCを採取するのは難しい。HSC提供者のリスクを軽減するため、一般的なHSC採取方法では、HSCを骨髄から末梢血へと動員する。そのために広く使われているのが顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)とよばれるタンパク質だが、G-CSFを使っても動員が非常にうまくいくとはいえず、HSCの動員にもっと適した方法が求められていた。

H Geigerたちは、EGFRがG-CSFによるHSCの動員を妨げる働きをすることを明らかにした。Geigerたちはマウスで研究を行い、HSCのEGFR発現を抑制すると、G-CSFに依存した動員が促進されることを発見した。重要なのは、EGFRを標的とする薬で数種類のがんの治療に利用されるエルロチニブを用いても同様な動員促進作用がみられることで、この発見が臨床的に重要な意味をもつことがわかる。

doi:10.1038/nm.2217

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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