エピジェネティクスで縁結び
Nature Neuroscience
2013年6月3日
プレーリーハタネズミの雌が伴侶について特定の好みを形成する際、遺伝子構造の変化が関与する。ただしこれは、DNA塩基配列を変更せずに遺伝子発現に影響を与えるものであるとの報告が、今オンライン版に掲載されている。いわゆるエピジェネティックとよばれるこの変化は、交尾に続いて起こり、社会的一夫一婦制を示すプレーリーハタネズミという生物種において生涯続くつがい形成の基礎をなすといわれている。
Mohamed Kabbajたちは、雌ハタネズミにヒストンタンパク質を変化させるトリコスタチンA(TSA)という薬剤を用い、交尾なしでもつがい形成を引き起こせるようにした。ヒストンは細胞内の凝縮したDNAが巻きつくタンパク質である。ヒストンの関係するこのエピジェネティック変化は、オキシトシンやバソプレシンといったホルモンの受容体に対応する遺伝子に特異的に起こっており、これらホルモンは一般に、伴侶の好みや社会的行動にかかわることが知られている。TSA投与をした雌ハタネズミでは、脳におけるオキシトシン受容体やバソプレシン受容体の量が増加していた。Kabbajらは、これら受容体を阻害する薬剤がつがい形成を妨げることを発見した。
今回の発見は、エピジェネティックな変化がプレーリーハタネズミにおいて社会的つながりの形成にかかわっていることを示しており、同様の変化がほかの生物種でもさまざまな社会的行動に同じようにかかわっている可能性を示唆している。
doi:10.1038/nn.3420
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications