【医学研究】ラットにおける出血管理に電気刺激が役立つ
Scientific Reports
2013年7月4日
マイクロ秒の電流パルスを利用してラットの動脈と静脈に電気刺激を加えることが、非圧縮性創傷における出血の管理と出血量の低減に役立つという可能性を示した論文が、今週掲載される。この方法がヒトの患者にも有効なことを明確にするためには、さらに研究を進める必要があるが、外傷患者や手術中の患者の非圧縮性出血の管理に役立つ可能性がある。
戦場で出血している兵士に止血帯を用いることは、外傷による死を減らすうえで役立つが、この方法は、腹部などの体腔への出血などの非圧縮性出血、そして、胴体と四肢や頸部との接合部分の創傷には使えない。1970年代には、固定された血管に電流を数分間、直接印加することで血栓形成を誘導できることが明らかになった。しかし、それによって生じる熱損傷のため、臨床診療では使えなかった。
今回、Daniel Palanker 研究室に所属するYossi Mandelたちは、ラットの大腿部(鼠径部)と腹腔の動脈と静脈にマイクロ秒の電流パルスを印加した。その結果、これらの血管が数秒以内に収縮し、それから数分以内に血管が元の大きさに拡張した。そして、電流を強くしたところ、血管が完全かつ永続的に遮断された。ラットの大腿動脈と腹部動脈の出血速度は低下し、出血が急速に止まり、大腿動脈からの出血量は、処置をしない場合の7分の1に減った。また、組織の損傷は、この血管収縮から最長3時間半後まで観察されなかったが、組織に対する長期影響の可能性を評価するには、これよりも長期間の追跡調査が必要となる。
doi:10.1038/srep02111
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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