Research Press Release
実験室で作られた網膜細胞の移植
Nature Biotechnology
2013年7月22日
マウスの胚性幹細胞から培養して作られた光感知細胞を、網膜疾患の成体マウスの網膜に組み込み、移植後に成熟させたとの報告が寄せられている。この研究は、網膜疾患や外傷による視力喪失を回復させる、細胞治療の開発に向けた一歩となる。
加齢黄斑変性症やさまざまな遺伝性網膜疾患では、光を感知する「視細胞」とよばれる細胞の損傷により、網膜の機能が失われる。このような病気を持ったマウスの網膜に、視力障害のない若齢マウスの網膜から単離した未成熟な視細胞を移植することにより、病気のマウスの視力を回復させられることが、これまでに明らかになっている。
今回Robin Aliたちは、胚性幹細胞から実験室で作製した未成熟桿体細胞の研究を行った。胚性幹細胞の方が、ヒトの患者に応用できる可能性が高い。Aliたちは、最近発表された「三次元」法を利用して作製した未成熟視細胞をさまざまな種類の網膜疾患をもつマウスの網膜に移植すると、網膜に組み込まれることを発見した。さらに、生きたマウスの体内で、移植された細胞が成熟して、完全に発生した機能をもつ桿体細胞と外見的に同じような細胞になることもわかった。このマウスの視力を回復させるには、今回の研究で作製した移植可能な細胞よりもはるかに大量の細胞が必要になるため、今回は移植マウスの視力が回復したかどうかは調べていない。
doi:10.1038/nbt.2643
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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