ヒト脳の空間地図
Nature Neuroscience
2013年8月5日
ヒトの脳においてグリッド状の活動が仮想環境の探索に応答して観察されるという研究が、オンライン版で報告される。この発見は、ヒトに内在するナビゲーション系は、物理的空間での動きがなくても活動することを示唆している。
場所の感知は、動物が環境内の特定の領域にいるとき活動する場所細胞(place cell)と、地図の経緯線に似た空間活動パターンを示すグリッド細胞とよばれるニューロンに依存していることが、以前の研究で示唆されている。これまでヒトで、場所細胞は発見されていたが、グリッド細胞はげっ歯類、コウモリ、サルでしか観察されていない。
Joshua Jacobsらは、ヒト脳内におけるグリッド様の活動についての証拠を報告しており、グリッド細胞の存在に対する強い直接的な証拠を提供し、他の哺乳類が用いるものと同様のナビゲーションのための座標系を人類も利用していることを示唆している。Jacobsらは、脳内に頭蓋内電極を埋め込み薬剤耐性てんかんの治療を行っている患者について、神経活動を記録した。コンピュータで生成した仮想空間の中でジョイスティックを使って対象物を探すように患者に指示し、記録した活動からグリッド状の特徴を探した。海馬内の場所細胞の活動に加えて、Jacobsらは、嗅内皮質と帯状回皮質のニューロンが環境内の複数の場所で活動して、仮想空間全体を覆う格子を形成していることを発見した。このグリッド状のパターンは、実在環境を探索している動物に見られるグリッド細胞に特徴的な活動パターンに非常によく似ているものであった。
doi:10.1038/nn.3466
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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