【医学研究】マウスの心臓を再生するヒトiPS細胞
Nature Communications
2013年8月14日
ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)をもとにして、マウスの心臓の足場材料で培養することで、正常に機能するヒト心臓組織が作出されたことが明らかになった。今回発表された個別化心臓構造体の作製法は、初期心臓形成の研究に役立つ可能性があり、最終的には、前臨床試験に応用できる可能性も秘めている。
脱細胞化した心臓全体に心筋細胞を播種する方法による心臓組織の作製は、ラットモデルで有望なことが明らかになったが、マウスの脱細胞化心臓でヒト胚性幹細胞を再増殖させる従来の試みでは、正常に機能する心臓構造体を生成できなかった。
今回、Lei Yangたちは、マウスの脱細胞化した心臓全体で、ヒトiPS細胞に由来する多能性心血管前駆細胞(ヒトの心臓の発生における最初期の細胞)を再増殖させて、ヒトの心臓組織を作製した。この前駆細胞は順調に増殖して心筋になり、20日間の血液供給の後、心臓構造体の約90%が自発的に収縮するようになった。また、予想された電気生理学的性質も示し、心拍を促進することで知られる薬物にも正常に応答した。Yangたちは、この新知見は、今回作製された心臓組織が前臨床試験に応用できる可能性を示していると考えている。
ただし、Yangたちは、今のところ、この心臓組織によって生じる機械的な力では血液を循環させるために不十分で、電気伝導も遅いため、この心臓構造体の機能性を改善するためには、さらなる研究が必要なことを指摘している。
doi:10.1038/ncomms3307
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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