重圧を受けているヨーロッパの森林
Nature Climate Change
2013年8月19日
ヨーロッパの森林による炭素吸収サービスは数十年間機能を続けると予測されていたが、2005年以降に炭素吸収源が飽和する徴候が現れてきていることを報告する論文が、今週オンライン版に掲載される。こうした炭素吸収の鈍化には、樹木の材積の減少、森林破壊率、そして、火災、暴風雨、虫害などの自然撹乱に対する脆弱性の亢進が関与していることが、この論文で示唆されている。
炭素吸収源は、大気から二酸化炭素を除去しており、京都議定書では、炭素吸収源をカーボンオフセットの一形態として利用することが奨励されていた。今回、Gert-Jan Nabuursたちがヨーロッパ地域全体の森林資源調査結果を調べたところ、2005年以降、樹木の幹材積増加量が減ってきており、その結果として炭素吸収容量も減少していることをわかった。この結果は、森林の年間平均成長量から樹木の年間平均自然枯死量を差し引く計算によって得られた。Nabuursたちは、この結果を説明できる条件はわずかしかないと考えている。ヨーロッパの森林は成熟度を高めているため、高齢の樹木が大部分を占めている。この条件と大気からの窒素沈着の減少と気候変動による夏季の大気湿度の低下を用いると、炭素吸収源の抑制につながる幹材積増加量の減少を説明できる。また、都市の無秩序な拡大(スプロール現象)と都市のインフラ整備によって森林破壊率が緩やかながらも上昇しており、吸収源の強度に影響を与えている。さらには、相対的に高齢のヨーロッパの森林は、自然撹乱による被害を受けやすく、これが大気中への炭素放出につながることが証拠によって明らかになった。
管理されているヨーロッパの森林による炭素吸収は、これまで考えられていたよりも吸収容量の上限に迫っているが、管理方法を変えることで、幹材積増加量を高め、炭素吸収源の飽和を遅らせることが可能だとNabuursたちは結論付けている。
doi:10.1038/nclimate1853
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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