Research Press Release
【ゲノミクス】ブラントホオヒゲコウモリのゲノム解析で長寿の秘密に迫る
Nature Communications
2013年8月21日
寿命が40年を超えるヒナコウモリ科のブラントホオヒゲコウモリ(Myotis brandtii)のゲノム塩基配列の解読と解析が行われ、長寿命に関与している可能性のある遺伝子の塩基配列変異が明らかになった。
ブラントホオヒゲコウモリは、小型のコウモリ種で、体の大きさと長寿命が著しく不釣り合いだ。今回、Vadim Gladyshevたちは、ブラントホオヒゲコウモリのゲノム塩基配列を解読し、この結果と他の脊椎動物のゲノムを比較して、反響定位、視力と長寿命にとって重要と思われるタンパク質を提示している。Gladyshevたちは、ブラントホオヒゲコウモリのゲノムと反響定位を行うバンドウイルカのゲノムを比較して、4つのタンパク質に類似点のあることを明らかにした。そのうちの2つは、内耳に存在する。また、Gladyshevたちは、コウモリが薄暗い光に適応した際に関与したと考えられる遺伝子変化も同定した。そして、マウスの長寿命において役割を担っている2つの増殖因子受容体、1つの成長ホルモン受容体とインスリン様成長因子1受容体の配列を調べ、他の四肢類と異なる配列変化を発見した。これらの遺伝子は、マウスとヒトの矮小化とも関連しており、長寿命のコウモリが小型であることとも整合している。Gladyshevたちは、これらの遺伝子の変化が、コウモリの長寿命と関連している可能性があると結論づけている。
doi:10.1038/ncomms3212
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications