Research Press Release
極地へ向かう作物害虫
Nature Climate Change
2013年9月2日
作物の害虫と病原体が、1960年以降、平均で1年に約3キロメートルのペースで極地に向かって移動していることが明らかになった。その詳細を報告する論文が、今週オンライン版に掲載される。この新知見は、これまでに行われた数百種類の害虫と病原体の観察結果に基づくもので、気候によって害虫が移動するという仮説を裏付けている。
作物の害虫(真菌類、細菌、ウイルス、昆虫など)の出現と蔓延は、食料の安定供給を確保する上で重大な課題となっている。おそらく最も有名な例は、1840年代にアイルランドで発生したジャガイモ飢饉だろう。害虫の蔓延を促進する主な要因がヒトによる運搬であることは知られているが、気候変動によって、これまで生息に適していなかった地域に害虫が拡大する可能性への懸念が高まっている。
今回、Sarah Gurr、Dan Beberたちの研究グループは、過去50年間の害虫発生に関する公開記録を用いて、気候によって害虫が移動するという仮説を検証した。観察バイアス(高緯度の先進国の方が低緯度の開発途上国よりも害虫の検出が早くなる傾向があること)のために、実際に検出された傾向とは逆の赤道方向への見かけ上の移動が示されることが想定される。この観察バイアスが、今回検出された傾向の強さを裏付けている。
doi:10.1038/nclimate1990
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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