非ヒト霊長類でのコロナウイルス感染治療
Nature Medicine
2013年9月9日
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が感染したアカゲザルに、広く使われる抗ウイルス薬の配合剤を投与すると、ウイルスの複製が抑えられるとの報告が寄せられている。この知見から期待されるように、ヒトでも抗ウイルス薬併用療法が効果を示すかもしれない。
MERS-CoVはヒトの急性呼吸器疾患の原因となり、これまでに知られている感染者の約半数が死亡している。現時点では、病気を軽症に抑えたり、感染を防いだりできる有効な治療法やワクチンはない。インターフェロンによる情報伝達は重要な抗ウイルス防御機構であり、C型肝炎ウイルス感染など、他のウイルス感染の治療にはインターフェロンα-2bとリバビリンが利用されている。また、この2つを併用するとMERS-CoVの複製も阻害できることが培養細胞では報告されている。
Heinz FeldmannたちはアカゲザルにMERS-CoVを感染させ、8時間後にインターフェロンα-2bとリバビリンを投与した。併用療法を受けたアカゲザルは、治療しない感染アカゲザルに比べ、肺の損傷がかなり少なく、炎症性免疫応答も軽減し、肺のウイルス量も減少した。また、治療したアカゲザルとしなかったアカゲザルを比較すると肺での遺伝子発現に違いがあり、病態生理学的応答の違いの一部は、この遺伝子発現の違いで説明できる可能性がある。唯一知られているMERS-CoV感染動物モデルでこのような知見が得られたことで、ヒトのMERS-CoV感染の治療にもインターフェロンα-2bとリバビリンの併用療法が応用できる可能性が裏付けられた。
doi:10.1038/nm.3362
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