新たな決断
Nature Neuroscience
2013年9月9日
何か新しい経験、たとえば馴染みのない食品を選ぶときなどには、決断の適否を判断しようと過去の経験から関連する記憶を思い起こすものである。このような現象は、たとえ直接の経験がなくても新規の選択を表す新しい関連が形成されるかもしれない仕組みを示しているとの報告が、今週オンライン版に掲載される。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による研究で、Helen Barron、Timothy Behrensらは、まず被験者におなじみの食品(ビートの根、カスタードクリーム、アボカドなど)に関連させた合図を示した。これらの食品は、被験者が実験前に味わったことがあるものである。最初の合図の直後に、被験者に新規の食品(ビート味のカスタードなど)を異なる合図とともに示した。これらは被験者が以前に味わったことがないものだが、ビートの根やカスタードクリームを味わった経験を思い起こせばその味を想像できる可能性がある。
新規の食品に出会った被験者が関連する過去の経験を実際に思い起こしたことを明らかにするため、Barronらは反復抑制(repetition suppression)という現象を活用した。反復抑制は、同じ経験が何度も再活性されるときに起こり、それに応答して、その経験に対する脳の活動が反復するたびに減少していくものである。その結果Barronらは、新規の食品(ビート味カスタード)に関連した合図への脳の応答は、それに先だって新規食品をつくる成分の1つ(ビートの根またはカスタードクリーム)に関連する合図があると弱められることを発見した。この減衰は、無関係の食品(ここではアボカド)の合図が新規食品に先行するときには現れなかった。Barron、Behrensらは、実験結果のこのような差異は反復抑制を反映していると示唆しており、そのため被験者が既知の食品とそれを成分として含む新規の食品に関連する合図を見るとき、同じ経験が脳で活性になっているとしている。
doi:10.1038/nn.3515
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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