温室効果ガス排出量削減の健康上の効用
Nature Climate Change
2013年9月23日
地球規模で温室効果ガス排出量を削減できれば、2100年には、140万~300万件の若年死を減らせるという見解を示した論文が、今週オンライン版に掲載される。この新知見では、大気環境の改善という価値が強調されているが、この点は、温室効果ガス排出量の削減によって同時に放出される大気汚染物質が減少する過程の研究では過小評価されていた。
気候変動の緩和によって同時にもたらされる利益の1つは、大気汚染の健康への影響が軽減されることだが、この効果の評価の仕方について懸念が存在している。現在の研究では、大気汚染による死亡が短期的かつ局所的影響として分析されており、大気汚染物質の地球規模での輸送、人口の長期的変化と気候変動の大気環境に対する間接的影響は軽視されていた。
今回、Jason Westたちは、全球モデル化手法、可能性の高い将来的シナリオ、そして、新たに確認された慢性疾患による死亡と気候変動の間接的な影響を受ける大気汚染物質(粒子状物質とオゾン)への曝露との関係を用いた総合的分析を行い、こうした軽視されてきた側面に取り組んだ。その結果、2030年に30万~70万件の若年死を防ぐことが可能で、そのうちの3分の2が中国であることが判明した。また、21世紀中頃には、年間80万~180万件の若年死を防止できることも分かった。
Westたちは、二酸化炭素排出量を1トン削減してヒトの死亡を防ぐことの金銭的価値を見積り、世界平均で約50~380ドル(約5,000~38,000円)とした。この額は、これまでの見積りを上回っており、2030年と2050年の温室効果ガス排出量削減の限界費用よりも多い。以上の結果は、気候変動の緩和が、気候の変化を遅らせることのほかにも価値のある活動であることを示唆している。
doi:10.1038/nclimate2009
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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