Research Press Release
増強された感覚
Nature Neuroscience
2010年10月11日
聴覚障害のネコに鋭敏な視力や運動検出能力がみられるのは、通常ならば聴覚機能にあてられる脳領域の再編成によるとの報告が、Nature Neuroscience(電子版)に寄せられている。難聴者の脳で起こっているかもしれない可塑性に関する洞察を与える発見である。
以前の研究で、聴力や視力に障害をもつ人では、その他の感覚の知覚機能が増強していることが実証された。障害をもつ感覚を本来補助していた脳の部分が再編成され,このような能力の増強を達成しているのではないかと提案されている。
S Lomberらは、先天性の聴力障害をもつネコで、視力の増強と聴覚皮質の再編成のはっきりした因果関係を立証した。障害をもつネコの聴覚皮質の特定の2か所を不活性化すると、視力の増強は起こらなかった。正常な聴力をもつネコでこの処置を行っても何の影響もなかった。
興味深いことに、障害をもつネコの視覚定位を増強する領域は、聴力をもつネコでは音源定位を補助していることが典型的だとわかった。また、運動検出を増強する領域は視覚運動処理領域に隣接していることからも、聴覚障害をもつネコの視力増強は聴覚皮質全体の分布状態ではなく、個々の領域の分布状態に左右されることを意味する。
doi:10.1038/nn.2653
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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