モントリオール議定書は気候温暖化の中断に寄与していた
Nature Geoscience
2013年11月11日
モントリオール議定書の下でオゾン層破壊物質の放出を禁止したことで、1990年代以降気候温暖化の進展が遅くなったことが検出できたという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この発見は、全球気候モデルと独立な統計的手法を用いて、20世紀にわたる人間活動と温暖化速度変化とを関連づけることに役立つ。
Francisco Estradaたちは、統計的分析を用いて1880年と2010年の間で大気中の温室効果ガス濃度の増加速度と温暖化速度の変化を同定した。これらの変化は時期が一致しているので、彼らは温暖化速度の変化は温室効果ガス濃度に影響を及ぼす特定の人類活動に原因を帰すことができると結論している。この発見は2回の世界大戦と世界恐慌という経済の停滞に応答して放出が減少したときには温暖化が減速したことを示している。Estradaたちはまた、CFC類(オゾン層を破壊するだけでなく潜在的に温室効果ガスとなる物質)の段階的廃止を始めたモントリオール議定書に対応した1990年代の減速も強調している。この解析はさらに、現在も持続している温暖化の始まりとなった1960年代の温度と温室効果ガスの際立った増加も明らかにしている。
関連するNews & Viewsの記事では、Felix Pretis とMyles Allenが、この研究は「温暖化速度の過去の変化は、経済の停滞からモントリオール議定書の制定まで直接的に人類活動に原因を帰することができる」ことを示した、と述べている。
doi:10.1038/ngeo1999
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