抗寄生虫薬の新たな標的
Nature Neuroscience
2013年11月11日
海藻に見つかるベタインという化合物は抗寄生虫薬だが、この物質が線虫類に対する殺虫剤として働く仕組みについての報告が今週掲載される。ベタインの作用機構を明らかにしたことで、この研究は寄生虫にみられる多剤耐性の蔓延に打ち勝つ新しい分子の開発を導く手掛かりとなりうるだろう。
かつての農民は穀物や家畜を守るために天然の殺虫剤として海藻を使用していたが、海藻が効果的な殺虫剤になる理由はわからなかった。近年、いろいろな研究で、海藻に存在するベタインが線虫の幼生の発達を休止させることが示されたが、その効果をもたらす分子標的や経路は依然不明のままだった。
Aude Pedenたちは、線虫をベタインに曝し、この物質の効果を変化させる変異を線虫の2種類のタンパク質で明らかにした。これらタンパク質の1つは SNF-3という、ベタインを細胞の内外に輸送する分子であった。SNF-3が変異すると、線虫は高度に収縮し麻痺するようになる。これはおそらく、ベタイン排出に失敗するためだろう。他のタンパク質、ACR-23というベタイン受容体の変異は、線虫をベタインの毒性に対し不感にし、SNF-3の変異した線虫で麻痺を防ぐ作用さえ示した。ACR-23は移動を促進するニューロンで発現していた。このことは、ベタインによるACR-23の通常の活性化が線虫に高度の収縮を引き起こし、麻痺させ、最終的には殺す理由を明らかにしている。このように Pedenたちは、ベタインの示す抗寄生虫効果の可能な仕組みを特定している。
doi:10.1038/nn.3575
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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