【ウイルス】アフリカのオオコウモリが運ぶウイルスの量
Nature Communications
2013年11月20日
アフリカ大陸全体に広く生息しているオオコウモリの集団において、(狂犬病ウイルスに近縁の)ラゴスコウモリウイルスとヘニパウイルスに感染している個体数が予想より多いことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、オオコウモリの集団構造が、このコウモリ種間でのウイルスの広がりを促進している可能性を示しており、このウイルス感染症のモニタリングを行う必要のある地理的範囲に関する指針となっている。
アフリカに生息するストローオオコウモリ(Eidolon helvum)は、ラゴスコウモリウイルスとヘニパウイルスを保有することが知られているが、これらのウイルスに感染したコウモリに症状が見られないことが多い。そのため、隔離集団でこうしたウイルス感染が見つかるのかどうかが明らかでなかった。今回、Alison Peel、James Wood、Andrew Cunninghamたちは、アフリカ大陸とギニア湾全体でストローオオコウモリを調べる研究を行い、集団構造が非常にわずかしか見られないことを明らかにした。この結果は、ストローオオコウモリが、アフリカ大陸を自由に移動して、交尾を行っていることを示唆している。また、ストローオオコウモリにおけるウイルス感染を調べたところ、そのウイルス塩基配列が、ガーナ、タンザニアとウガンダで発見されたコウモリで検出されたウイルス塩基配列に似ていることが分かり、アフリカ大陸全体でのコウモリ種の混合がさらに確認された。
ブタがラゴスコウモリウイルスとヘニパウイルスに感染したと思われる事例が報告されているが、これらのウイルスがヒトから検出された例はない。アフリカのオオコウモリは大量に存在し、ヒト集団に近接して生息していることから、今回の研究で得られた知見は、今後のヒトの健康に重要な意味を持つ可能性がある。したがって、今後、この感染症がほかの哺乳類集団に流出することを防ぐためには、このウイルス感染症とこのウイルスを保有するコウモリのモニタリングを続けることが必要と考えられる。
doi:10.1038/ncomms3770
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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