【動物学】獲物に忍び寄るタツノオトシゴ
Nature Communications
2013年11月27日
タツノオトシゴは、頭の形が進化して、獲物に気づかれずに忍び寄れるようになった、という見解を示した論文が、今週掲載される。今回の研究では、独特な頭の形状のおかげで、タツノオトシゴが、その周囲を直接取り巻く水の撹乱を最小限に抑えつつ移動できることが示唆されている。
タツノオトシゴは、非常にゆっくりと泳ぐ生物だが、その主たる摂食活動は、周辺の水のわずかな変形でも検出できるために捕獲が難しくなっている獲物の狩猟だ。タツノオトシゴの弓なりに曲がった首は、ばねのように働いて、比較的離れた場所にいる獲物を攻撃できるようになっており、タツノオトシゴの摂食機構は、これに依存している。ただし、この摂食機構と獲物を捕まえることのできる距離は、首の実際の長さによって制約されている。これまで、泳ぎの遅いタツノオトシゴがどのようにして獲物に気付かれずに捕獲可能な距離まで近づけるのかが分からなかった。
今回、Brad Gemmellたちは、デジタルインラインホログラフィーを用いて、タツノオトシゴの頭部形状の機能を調べた。この技術を用いることで、3次元画像が得られ、その結果、タツノオトシゴを取り巻く水の動きを追跡観察することができた。この観察で、タツノオトシゴが獲物に近づくとき、タツノオトシゴの鼻を取り巻く水がほとんど動かず、それが、獲物に気付かれずに忍び寄る上で役立つことが分かった。また、ヨウジウオ(タツノオトシゴの近縁種だが、頭部の形状が異なる)によって生じる水の撹乱との比較が行われ、タツノオトシゴの前面に流体力学的に静かな領域が生じる原因が頭部の形状自体であることがさらに実証された。
doi:10.1038/ncomms3840
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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