免疫の活性化で脳腫瘍を縮小
Nature Neuroscience
2013年12月9日
脳のがんのマウスモデルで、脳内の免疫細胞を薬理学的に増強すると、がんを形成する幹細胞の増殖を抑えられるとの研究が、今週のオンライン版に報告されている。この研究はまた、神経膠芽腫という脳の腫瘍のうち進行性の最も強いものに対抗すると期待される治療薬を特定している。
悪性の脳腫瘍はしばしば、脳腫瘍開始細胞(BTIC)と呼ばれる腫瘍形成幹細胞が存在するため従来の薬物療法が効かない。BTICは自己再生できる幹細胞類似の細胞である。神経膠芽腫を持つ患者では、BTICがしばしば小膠細胞(ミクログリア)やマクロファージなどの免疫細胞に囲まれている。これら免疫細胞は、中枢神経系の組織を常時探索し、免疫防御の第一線をなしている。
V. Wee Yongたちは、患者の脳腫瘍に由来する免疫細胞について、BTICの成長に対する影響を調べた。Yongたちは、患者由来の免疫細胞がBTICの拡大を和らげるのにあまり効果がないことを発見した。ところが、脳腫瘍ではない患者から得た小膠細胞やマクロファージはBTICの成長を減少させた。そこでYongたちは低分子化合物のライブラリを調べ、アムホテリシンB(AmpB)という薬物を同定した。これは、マクロファージと小膠細胞を活性化して作用し、BTIC増殖を減らす。AmpBをヒト患者由来のBTICを持つマウスに投与したところ、生存期間がほぼ2倍になり、脳腫瘍の成長が目覚ましく減少した。
AmpBは抗真菌薬としてすでに米国食品医薬品局からの認可を受けているが、この薬物には高用量で静脈投与した場合、高熱誘発や多臓器不全という重篤な(致死の可能性もある)副作用を起こすことが知られている。AmpBおよび類似の免疫活性化薬物を神経膠芽腫治療薬として使うには、その安全性と可能性をさらに研究する必要がある。
doi:10.1038/nn.3597
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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