Research Press Release
活動している細菌の毒針を見る
Nature Structural & Molecular Biology
2013年12月9日
病原細菌が毒素分子を宿主細胞に注入する過程を初めて視覚的に捉えたとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。
3型分泌装置(T3SS)は高度に保存されているタンパク質装置で、病原因子として知られる細菌の毒素分子を直接宿主細胞に注入し、それによって宿主細胞の機能を変更してしまう。T3SSの中心にあるのはインジェクチソーム(injectisome)という注射器に似た針を持つ複合体で、細菌に埋め込まれており、標的細胞に病原因子が侵入する経路を提供していると考えられている。
Thomas Marlovitsたちは構造生物学と画像化技術を用い、サルモネラのT3SSが病原因子を宿主細胞内に送り込む仕組みを示した。 Marlovitsたちは、操作した基質分子を結合しているインジェクチソームの三次元モデルを作り、基質を分泌している過程にあるT3SS装置全体を描き出すことに成功した。Marlovitsたちは、インジェクチソーム複合体の中央にある「穴」を基質分子が通り抜けることを明らかにし、宿主細胞へと通り抜けるために病原因子がまず折りたたみをほどくに違いないことを示している。
T3SSはさまざまな病原細菌の病原性に不可欠なので、T3SSを経由する宿主細胞への侵入経路を阻止できれば、細菌感染との戦いに有望な治療方法となる可能性がある。
doi:10.1038/nsmb.2722
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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