生態:食料の安定供給確保に限界か
Nature Communications
2013年12月18日
世界の主要穀物(米、小麦など)の約30%が、農家の圃場での最大可能収穫量に達してしまった可能性のあることが判明した。近年、これらの主要穀物の収量は、急減し、あるいは横ばい状態になっている。全世界で食料の安定供給は確保されるとする将来予測は、収量が順調に増加する傾向を前提とするのが通例だが、今回の研究では、そのような傾向にならない可能性が示唆されている。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
今後の世界の食料生産量と増え続ける世界人口の食料需要への対応可能性に関する予測は、これまでのところ、過去の傾向に基づいた予測が大部分だった。ところが、過去の傾向は、作物生産量の増加を可能にする新技術(一度限りの技術革新も含まれる)の急速な導入に基づいており、そのため、将来予測が楽観的なものとなっていた。
今回、Kenneth Cassmanたちは、穀物生産量が最も多い国々における穀類、油料作物、糖料作物、繊維作物、豆類、塊茎、根菜類、米、小麦、トウモロコシの生産量の過去の傾向を解析し、作物収量が将来的に増加するという予想シナリオに反した証拠を得た。この解析データによれば、世界で作付面積の最も多い地域の多く(東アジア、ヨーロッパ北西部と米国)で、1種以上の主要穀類の収量増加率が、最近になって、鈍化し、あるいは頭打ちになったことが示唆されている。Cassmanたちの計算では、世界の米生産の約33%、小麦生産の約27%が収量増加率低迷の影響を受けているとされる。中国では、小麦の収量増加率が一定レベルを保つ一方で、2010~2011年のトウモロコシの収量増加率が、2002~2003年比で64%減少した。この減少は、農業の研究開発、教育、インフラへの投資額が増加していても起こっており、多くの地域で潜在収量の限界に達したことが示唆されている。
著者は、さらなる収量の増加を維持するためには、作物生産に関する数多くの要因の微調整が必要となる可能性が高いと報告している。しかし、このことを農家の圃場で実現するのは難しいことが多く、それに伴う限界費用と必要な労働量、リスク、環境影響が利益を上回る可能性もある。
doi:10.1038/ncomms3918
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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