大気科学:核兵器実験に由来する放射性粒子が地表に近づく可能性
Nature Communications
2014年1月8日
核実験などの活動によって大気の高層に放出された放射性粒子の濃度が予想より高いことが明らかになった。また、今回の研究では、こうした放射性粒子が、火山噴火によって大気層の高層から低層へ再分配されて、地表に近づくことを示す証拠も得られた。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
過去50年間、核兵器試験、人工衛星の燃え尽き、原子力発電所事故によって、放射性物質が大気の高層(成層圏)に放出されてきた。低層大気では、放射性粒子が水滴や固体表面に沈着すると、大部分の放射性細塵が大気中から急速に除去されるが、成層圏では、そのような沈着が起こらないため、成層圏での放射性粒子の滞留期間がかなり長くなっている。しかし、成層圏の放射性プルトニウム濃度は無視できるほど低いと研究者は考えていた。今回、Jose Corcho Alvaradoたちは、そうとは言えないことを1970年以降に大気の高層で定期的に採取されていたエアロゾルのデータによって明らかにした。今回の研究では、成層圏の放射性プルトニウムと放射性セシウムの濃度がこれまでの推定値よりかなり高いと断定され、これらの粒子の平均滞留期間を2.5~5年とする見解が示された。
さらに、Alvaradoたちは、2010年のエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火を例にとり、火山噴火によって、大気の高層から低層への放射性粒子の再分配が起こる可能性を明らかにした。しかし、低層大気で放射性粒子の濃度が上昇しても、その値は非常に低いため、人間の健康にとっての懸念材料になる可能性は低い。
doi:10.1038/ncomms4030
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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