【行動】イルカも視覚に依存して世界を認識している
Scientific Reports
2014年1月16日
イルカは、水中環境での生活に適応しているが、周囲の世界を知覚する方法が、ヒトとチンパンジーと基本的に似ているという研究結果が明らかになった。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
イルカは、空中の視力も水中の視力も霊長類より劣っているが、それでも複雑な物体と身ぶりを視覚によって知覚し、判別しているように思われる。しかし、イルカの視知覚の能力を調べる系統的研究は少なかった。今回、友永雅己(ともなが まさき)たちは、さまざまな特徴(曲線、開いた形状など)を有する2次元幾何学図形(例えば、○や×)を使って、バンドウイルカ3個体に対して視覚的な見本合わせ課題を実施した。この課題で、イルカに、水面より上の位置で提示された図形(見本刺激)に鼻先で触れさせ、次に、その図形と別の図形を同時に提示して、最初に掲示された図形に触れるかどうかを調べた。チンパンジーとヒトについても同等の課題を実施し、チンパンジー7個体に対してはコンピューターを用いた見本合わせ課題を実施し、ヒト被験者20名は、類似度評価を行った。
その結果、イルカ、チンパンジー、ヒトのいずれもが、同じ特徴を有する図形を同じものと知覚した。ただし、同じものかどうかを判断する際にそれぞれの図形の特徴をどの程度重視するのかという点は、イルカ、チンパンジー、ヒトの間でわずかな違いがあった。例えば、イルカとチンパンジーは、鋭角的な特徴に依存し、チンパンジーの知覚判断は開いた形状に大きく影響され、ヒトの知覚的分類には曲線が重要だった。イルカとチンパンジーとヒトは、それぞれ異なった環境に適応し、視覚に対する依存度が異なっているにもかかわらず、視覚世界を知覚する方法が似ていることが、今回の研究結果によって示唆された。
doi:10.1038/srep03717
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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