【大気科学】中国の大気汚染が太平洋上の低気圧の強度に影響する
Nature Communications
2014年1月22日
過去10年間のアジアでの大気汚染の増加で、北西太平洋上で発生する低気圧の強度が高まった可能性のあることを報告する論文が掲載される。気候変動政策を策定する際にアジアの大気汚染が全世界に及ぼす影響を考慮することの重要性が、この新知見によって明らかになったと論文著者は考えている。
近年、東アジアでの急速な工業発展により、空気の質が急速に悪化した。特に中国が深刻な大気汚染に見舞われており、国内の多くの都市で、エアロゾルと微粒子物質の濃度がこれまでになく高いレベルに達している。アジアでの大気汚染が直下の下流にあたる太平洋での気候と低気圧の活動に影響を及ぼしている可能性を科学者が指摘してきたが、それに関与している可能性のある雲の微物理的性質のモデル研究を行って、その結びつきを確認することは難しい。
今回、Renyi Zhangたちは、高分解能の雲分解モデルを用いて、この捉えにくい微物理的性質を究明し、その結果を全球気候モデルに当てはめて、気候に対する影響を評価した。今回の研究では、2種類のモデルシミュレーション(清浄大気シナリオと汚染大気シナリオ)が実施され、過去の太平洋上での低気圧活動の観測結果との比較も行われた。その結果、過去30年間にアジアでの大気汚染が北西太平洋上の低気圧の進路に大きな影響を及ぼし、中緯度低気圧の強度が高まった可能性のあることが示唆されている。
これまでの研究では、中国での大気汚染抑制のための大規模な取り組みが、絶え間ない経済成長に追いついていないことが示唆されてきたが、今回のZhangたちの研究は、この問題が、地域住民の健康だけでなく、全世界の気候に影響を及ぼす可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms4098
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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