炭素排出量の移転と気候変動対策
Nature Climate Change
2014年1月27日
開発途上の国と地域でのクリーン開発のための資金を調達することで、これらの地域から先進国への炭素排出量の純移転が相殺され、先進国の気候移転対策が強化されるという結論を示した論文が、今週に掲載される。貿易によって生じる炭素排出量に対する責任を各国の対策にどのように組み込むのか、という点をめぐる議論が世界で活発に行われているが、答えは見つかっていない。今回の研究で得られた知見は、その解決に向けた手掛かりとなっている。
国際貿易に具現化された炭素排出量は、過去20年間で4倍に増え、0.4GtCO2(1990年)から1.6 GtCO2(2008年)に達した。この問題を放置すれば、全球炭素排出量の削減を目指した各国の排出量削減目標の実効性が損なわれるという認識が得られているが、各国の対策は、今も領土内の炭素排出量のみに立脚している。その主な理由は、排出量の移転を政策に組み込む最良の方法が明らかになっていないことだ。また、政策当局者は、そうした組み込みに伴って著しい経済的コストが発生する可能性に対する懸念も表明している。
今回、Marco Springmannは、全球的なエネルギー経済モデルを用い、排出量の移転を政策的に考慮した3つの政策的アプローチが環境と経済に与える影響について、一貫性のある分析を行った。3つの政策的アプローチとは、(1)排出量削減の国内目標を調整して排出量の移転を考慮に入れる方法、(2)排出量を輸出する開発途上の国と地域での排出量削減に資金を提供して排出量移転を相殺する方法、(3)物品の輸入価格と輸出価格を物品の炭素含有量に応じて調整する方法であった。その結果、第1と第3のアプローチは環境に対して有効でないことが分かったが、第2のアプローチは、排出量削減による正味の経済的利益が最大となり、全球的な排出量削減を最も経済的に達成できることが判明した。
doi:10.1038/nclimate2102
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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