Research Press Release
【生殖生物学】ヒト胚は自らの発生能を示すシグナルを出している
Scientific Reports
2014年2月7日
ヒト胚は、子宮に着床する前に、自らの発生能を知らせるシグナルを出している可能性が浮上した。今回の研究では、着床段階の胚選択において重要な役割を果たす2つの異なる機構が同定され、これにより、それぞれの胚に適応した着床過程が生じることが明らかになった。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
ヒト胚は、正常な発生を損なう複雑な染色体異常を有していることが多い。染色体異常のある胚は、そもそも着床しないものもあるが、多くは、子宮内膜を形成する細胞に定着し、その後何らかの機構によって排除される。この機構についての解明は進んでいない。
今回、Jan Brosens、Nick Macklonたちは、ヒトの培養材料と生きたマウスを使った実験で、胚の着床不全の基盤となる過程を調べた。その結果、発生能を有するヒト胚が、マウス胚と同様に、トリプシンシグナルを生成して、着床のために子宮環境を能動的に増強し、発生の進行を図ることが明らかになった。これに対して、発生能の損なわれた胚は、子宮内膜の細胞にストレス応答を誘導するという考え方が示された。今回の研究は、着床時の胚選択を支配する過程に関する理解を深めるものと言える。
doi:10.1038/srep03894
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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