温暖化を吹き飛ばす太平洋貿易風
Nature Climate Change
2014年2月10日
最近になって地球の大気温度の上昇の勢いが鈍っているが、原因の解明は十分でない。また、この特徴の主要な構成要素の1つとして、東太平洋の表層水の温度が低いことも明らかになっているが、その発生過程は明確になっていない。このほど、太平洋貿易風の強度上昇が、海洋表面下での熱の取り込みを通じて、地表温度の摂氏0.1~0.2度の低下に結びつく過程を調べる研究が行われた。この温度低下は、大気温度の上昇鈍化のかなりの部分に相当する。この研究結果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
今回、Matthew Englandたちは、観測結果と気候モデルを用いて、貿易風の強度上昇が気候に与える影響を調べた。その結果、この気候モデルが不規則な強風によって強制された場合に見られる海面の応答が、観測された傾向と一致することが判明した。この浅い海洋循環ループは、風が強くなることで、速度を高め、その結果として、赤道域における下層の冷たい水の湧昇の増加と海面下層への温かい水の沈み込み(熱の降下)が生じている。また、Englandたちは、地表温度の低下の約80%が2000年以降に起こったことを発見したが、このことは、風の強度上昇が、温暖化の鈍化に重要な寄与をしていることを示している。
今回の研究で得られた知見からは、貿易風の強度上昇が続けば、温暖化の鈍化が継続し、貿易風の強度が低下すれば、急速な温暖化に逆戻りすることが示唆されている。
doi:10.1038/nclimate2106
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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