気候感度の調節 (N&V)
Nature Climate Change
2014年3月10日
気候感度(大気組成の変化に対する対する気温の応答)の下限値はこれまで1.3℃未満とされてきた。しかし、この値が不正確である可能性が高いことを示した論文が、今週オンライン版に掲載される。この推定値が低いのは、気候感度の計算で二酸化炭素の温暖化効果に対し、大気中の微粒子物質とオゾンのより大きな正味の寒冷化効果を計上していないからである。
大気組成の変化が気候感度に及ぼす影響を解明することは、人為起原の排出による気温の変化を正確に予測する上で重要な意味を持っている。しかし、温室効果ガスの増加にもかかわらず、過去10~15年の地表温度の上昇が比較的ゆっくりしていることから、これらの観測結果と単純な気候モデルに基づく気候感度の評価が行われた。こうした気候感度は、複雑な気候モデルによる予測の下限に位置している。
Drew Shindellは最新の気候モデル相互比較研究(CMIP5)の結果を分析し、気候感度が大気組成によってどのように変化するのかを解明した。単純なモデルを用いたこれまでの研究では、二酸化炭素に適用したのと同じ感度の重みづけを大気中の微粒子物質とオゾンにも適用しており、最近のある研究では、過渡気候応答(決められた期間内での気温の変化)は1.3℃であると報告されている。しかし、Shindellは微粒子物質やオゾン、二酸化炭素のさまざまな影響を考慮に入れることで、過渡気候応答は1.7℃になると報告した。これは、より複雑なモデルの結果と一致する。
David Stainforthはこのテーマと関連したNews and Viewsで、「過渡気候応答に関する今回の新たな推定値は、単純な気候モデルを適用する際の一般的な暗黙の了解に疑問を投げかけることで生じた」とし、単純なモデルは政策に関する研究で広く用いられているため、気温の変化を正確に予測することが重要だと指摘している。
doi:10.1038/nclimate2136
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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