気温の上昇がイングランドとウェールズのコミュニティーに及ぼす影響
Nature Climate Change
2014年3月24日
住民が気温の悪影響を最も受けやすい英国のロンドンとイングランド南東部の地域では、2001~2010年の夏季に気温が摂氏1度上昇するごとに、心血管と呼吸器関連疾患による死亡リスクが10%以上増加したことが明らかになった。この新知見は、気温上昇に対して脆弱な地域を特定し、気温上昇の影響の不均一性を定量化することによって公衆衛生上のリスク解析と適応解析に役立つ可能性がある。この研究結果について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
2003年のヨーロッパの酷暑では、多くのコミュニティーが、全球的気候変動を原因とする極端な気象現象による悪影響と局所的気候の変化に対して脆弱であることが明らかになった。これまでの社会人口学的研究では、さまざまな集団の人々(例えば、高齢者と若年者)に対する気温の変化の影響を調べてきたが、地域別のコミュニティーレベルの脆弱性に関する調査は行われていなかった。
今回、Majid Ezzatiたちは、地理的分解能が非常に高い死亡率統計と環境データを用いて、イングランドとウェールズの全376ディストリクトにおける夏季の高温を原因とする死亡者数の解析を全国規模で実施した。その結果、脆弱な地域の住民は、気温が摂氏1度上昇すると心臓・呼吸器系の疾患で死亡する可能性が10%高まるのに対して、弾力性の高い北方の地域の住民には、ほとんど影響が見られなかった。Ezzatiたちは、夏の気温が摂氏2度上昇すると、死者が1500人以上増える可能性があり、その約半数が、イングランドとウェールズの所得の低い95ディストリクトの住民であることを指摘している。
doi:10.1038/nclimate2123
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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