Research Press Release
海水準上昇の勢いは止まっていない
Nature Climate Change
2014年3月24日
過去10年間に報告されていた海水準上昇の鈍化は、気候の自然変動が原因であり、地球温暖化の影響の鈍化を示しているのではないという結論を示した論文が、今週のオンライン版に掲載される。こうした気候の年々変動を補正した結果、海水準上昇率は年3.3±0.4 mmとなった。これは、1990年代に観測された年3.1 mmに近い。
今回、Anny Cazenaveたちは、自然変動と人間活動による影響を切り離して考えるために、1994~2002年と2003~2011年の人工衛星高度計による測定結果を処理した5組の著名な研究グループによる全球平均海水準の時系列データを解析した。2003~2011年のデータによれば、海水準の平均上昇率は年2.4 mmで、それまでの約10年間の上昇率が年3.5 mmであるため、約30%の低下となった。しかし、Cazenaveたちは、海水準の年々変動の最大の原因がエルニーニョ/南方振動であり、これが、陸上での水の貯蔵量と大気中の水蒸気含有量の変化を通じて、全球水循環に影響を与えている点を指摘している。そして、自然変動を排除すると、第1の測定期間と第2の測定期間の間で、海水準の上昇が鈍化していないことが判明した。今回の研究結果は、気候変動のシグナルを抽出するためには、短期的な自然変動を定量化し、その点に関して気候記録の補正を行う必要のあることを明確に示している。
doi:10.1038/nclimate2159
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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