Research Press Release
【微生物学】狩猟採集民の腸内細菌
Nature Communications
2014年4月16日
タンザニアのハツァ族という狩猟採集民の腸内に生息する微生物のカタログが作成された。この微生物の組成には独特な特徴があり、それが、ハツァ族の食料採取の生活様式と結びついている可能性が明らかになった。この独特な特徴の1つは、ヒトの健康に役立つ「善玉菌」と一般に考えられているビフィズス菌が見られないことだ。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Amanda Henry、Alyssa Crittendenたちは、ハツァ族と欧米人の糞便に由来する細菌と特定の微生物代謝産物(短鎖脂肪酸、SCFA)の解析を行った。その結果、ハツァ族と欧米人では、微生物とSCFAの組成に違いがあり、ハツァ族の方が腸内微生物の多様性が高いことが分かった。意外なことに、ハツァ族の腸内からビフィズス菌が検出されなかった。ビフィズス菌は、その他の全てのヒトと家畜の腸内で生息している。もう1つの独特な特徴は、腸内微生物の組成に性差があることで、性別分業が原因となっている可能性がある。
新石器時代に狩猟採集社会から農耕社会への移行が起こったとき、食事と生活様式が劇的に変化し、ヒトとその腸内微生物は、この移行に適応する必要があった。今回の研究成果は、そうした同調的適応の解明に向けた重要な前進であり、「正常」あるいは「健康」な微生物叢という考え方が状況依存的であることを明確に示している。
doi:10.1038/ncomms4654
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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