【大気科学】スーパーコンピューターで熱帯地方の気候予測を改善する
Nature Communications
2014年5月7日
スーパーコンピューターと高分解能気候モデルを併用することで、熱帯地方の1か月間の気候予測が可能になった。この新知見は、今後の熱帯地方でのモンスーンとサイクロンの動態の予測にとって重要な意味を持つ可能性がある。この研究成果を報告する論文が掲載される。
マッデン・ジュリアン振動(MJO)は、移動性の雷雨の集団であり、撹拌状態の雲の塊を特徴としている。MJOは、30~60日の期間にわたって、熱帯インド洋、太平洋、時には大西洋の上空を東向きに移動し、異常な回数の豪雨を引き起こし、それがモンスーンの動態と熱帯サイクロンの発生に大きく影響する。MJOの解明と予測には、高分解能での雲微物理が関係しており、困難を伴っていた。複雑な雲解像数値モデルが開発されているが、これまでのコンピューターの計算能力不足のため、詳細な解析には制約があった。
今回、宮川知己(みやかわ・ともき)たちは、日本国内で最近開発された「京」コンピューターの優れた計算能力を活用して、高度に複雑な雲解像モデルNICAMを用いて、一連の40日間MJOシミュレーションを行った。京コンピューターの膨大な計算能力(10ペタフロップ)で、54回の高分解能シミュレーションの統計的評価が行われ、その後、NICAMを用いて、最大1か月前にMJOの有効な予測を行えることが明らかになった。
今回の研究結果からは、複雑な機構モデル研究にとってコンピューターの計算能力の向上が有望な手段となることが明らかになったが、高性能のコンピューターシステムは、数が少なく、研究者が現存する高性能コンピューターを奪い合う状況になっているため、今回の研究で示された予測方法が広く用いられるようになるまでに、ある程度の時間を要するかもしれない。
doi:10.1038/ncomms4769
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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