一般的な腫瘍の臨床試料を調べるための解析プラットフォーム
Nature Medicine
2014年5月19日
腫瘍の臨床試料から抽出した少量のDNAを使って全エキソーム解析(WES)を行い、「臨床グレード」のデータを得るための解析プラットフォームの報告が寄せられている。この方法のおかげで、患者に最善の医療を提供するのに重要な、WESを利用した方針決定の実現が一歩近付いた。
WESは近年、生物学の発見を大きく変化させ得る技術として登場したが、FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)組織から取った遺伝物質を利用する確実な方法がないことが、臨床現場での幅広い利用の妨げとなっている。FFPEは、患者由来の腫瘍組織を貯蔵する一般的な方法の1つで、外科手術での組織試料や生検組織の固定によく使われるが、遺伝物質の部分分解も起こる。さらに、WESの効果を個々の患者の治療に活かす上で難しい課題となってきたのが、臨床的に重要な変化を見つけ出す臨床解釈のアルゴリズムやWESデータを予測的に患者に応用するのに必要な枠組みがないことである。
Eliezer Van Allenたちは、極めて少量のDNAを用いた新しい臨床WESプラットフォームを16人のがん患者に予測的に応用したところ、そのうち15人について、臨床にすぐに役立つ知見が得られた。またAllenたちは、さまざまな純度、古さの臨床試料を利用してこの方法の有効性評価も行い、FFPE腫瘍組織試料を使って、新鮮凍結試料(通常は遺伝物質が完全な状態に保たれている)に匹敵する結果を得た。このエキソーム解析結果に基づいて、転移肺腺がん患者1人を効果的に治療することができた。しかし、臨床WESを取り入れることで、通例の診療が変わるかどうかを明らかにするには、もっと大規模なコホート研究が必要だろう。
doi:10.1038/nm.3559
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