薬物濃度を照らす光
Nature Chemical Biology
2014年6月9日
光を利用して治療中の薬物濃度を監視することによって有害な過剰投与や非効率な過少投与を発見する新しい方法が、今週のオンライン版に掲載の研究論文で明らかにされる。この方法の簡単さは、診断試験室以外での薬物治療の監視において特に有用と考えられる。
最適な医薬品投与量、あるいは処方される薬物の濃度は、治療を受ける患者本人の疾患および特性によって大きく変わる場合がある。医薬品の中には「治療域」が極めて狭いものがあるが、それは、患者に対する過度の毒性を生じさせずに疾患を効果的に治療するために特定の濃度で使用しなければならないということを意味する。従って、処方された用量で適切な濃度となることが確認されることは、極めて重要である。しかし、現在、薬物濃度の測定には時間のかかる手順や、医師の研究室または臨床試験室以外では容易に使用することができない機械が必要である。
今回、Kai Johnssonたちは、タンパク質と人工的成分の両者によって構成される大型センサー分子の要素として発光タンパク質を採用し、その分子を血液検体に投入した。薬物分子の非存在下でこのセンサー系が発するのは赤色光である。しかし、薬物と結合するとセンサーの光は青色に変わり、赤色光と青色光との比率は薬物の濃度に依存する。研究チームは、広く使用されている6種類の医薬品でその系が機能することを示した。
系が発光すると、そのシグナルは1滴の血液からでも市販のデジタルカメラを利用して検出されることから、この方法は、インフラの未発達な開発途上地域や患者の自宅での使用に応用することができる可能性が示唆された。
doi:10.1038/nchembio.1554
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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