【地球科学】中国のセレン欠乏地域にとってのモンスーンの重要性
Nature Communications
2014年9月3日
中国国内には、セレンの少ない地域が存在するが、それがモンスーンの活動の結果だった可能性を指摘する論文が掲載される。この新知見から、陸上でのセレン分布を予測し、骨、軟骨と心臓の慢性疾患などセレン欠乏に関連する健康障害の予防に役立つ可能性がある。
セレン欠乏症は、世界中で大きな問題となっており、セレンの摂取量が少ない人が最大10億人存在すると考えられている。この問題は、中国中央部で特に目立っており、この地域の多くの若い女性と子どもが、骨の障害や関節痛を引き起こすカシン・ベック病、そして、心臓の障害を引き起こし、命に関わることもあるケシャン病にかかっている。しかし、低セレン地域が生じる原因は、分かっていない。
今回、Lenny Winkelたちは、約700万年にわたる中国中央部の気候記録の解析を行い、長期にわたるセレン濃度の変化が東アジアでのモンスーンの強度に関連している可能性があることを明らかにした。Winkelたちは、高濃度のセレンが、海洋から大気を経由して輸送され、夏のモンスーン期の降雨によって堆積するという考え方を提唱している。
局所的に土壌セレン濃度の高い地域が存在する理由は、岩盤の地質学的性質によって説明できるが、Winkelたちが明らかにした夏季モンスーンの北限の南側でのセレンの分布と降雨強度の類似は重要な意味を持っている。こうしたセレンの分布の原因がモンスーンによる降雨であるとするWinkelたちの仮説を確認するには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms5717
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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