Research Press Release
【気候変動】北極の海氷減少による極渦の弱化
Nature Communications
2014年9月3日
近年の北半球での極渦の弱化と厳しい冬の寒さの原因が北極での海氷減少である可能性を示した研究論文が掲載される。
近年、寒い冬が続いており、ヨーロッパと米国の両方に重大な社会的、経済的影響が及んでいる。このように気温が極端に下がっている原因を極渦に求める見解が示され、北極の海氷の減少との結び付きが既に明らかになっていたが、はっきりとした機構についての提案はなされていない。
今回、Seong-Joong Kimたちは、観測による解析とモデル実験を行って、北極での海氷の減少と北極の上層大気の循環との動的関連を明らかにした。つまり、北極海のシベリア側における初冬の海氷面積の減少が、上層大気への大量の熱の放出につながっているというのだ。そして、モデルによるシミュレーションでは、この熱流束が、西向きのジェット気流の構造に干渉し、その結果、極渦が弱化することが示唆された。
北極での海氷減少は、極渦に影響を及ぼす可能性のある要因の1つにすぎない。他の要因についても系統的な研究を行って、解明を進め、季節予報の精度を高めなければならない。
doi:10.1038/ncomms5646
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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