【インフルエンザ】ウイルス粒子を構成するタンパク質が宿主によって異なる
Nature Communications
2014年9月17日
同じ遺伝子構成のウイルスに感染していても、体内で産生されるウイルス粒子のタンパク質の構成は感染した種によって異なるという研究結果を報告する論文が掲載される。今回の研究では、インフルエンザのウイルス粒子に常に組み込まれる宿主の細胞タンパク質が複数同定され、インフルエンザウイルスにはさまざまな宿主依存的特性があることが明確に示された。
ウイルスは、宿主の細胞内に定着し、宿主の細胞装置を利用してウイルス粒子を増やす。個々のウイルスが感染できる動物と体内組織は、このウイルス粒子に含まれるタンパク質によって決まっており、こうしたタンパク質は、宿主の免疫系の重要な攻撃対象となっている。しかし、インフルエンザウイルスなどのウイルスに含まれるウイルスタンパク質と細胞タンパク質の数には個体差があり、そのためにウイルスを正確に解析することが難しくなっている。
今回、Ervin Fodor、Edward Hutchinsonたちの研究グループは、鶏卵と哺乳類細胞で培養されたインフルエンザのウイルス粒子を調べて、その中に存在するタンパク質を同定し、定量した。その結果、ウイルス粒子に、一般的なウイルスタンパク質と細胞タンパク質が含まれており、特定の細胞タンパク質が一部のウイルスタンパク質よりも多く存在することが明らかになった。また、鶏卵で培養されたウイルス粒子だけに存在する細胞タンパク質や哺乳類細胞で培養されたウイルス粒子だけに存在する細胞タンパク質も見つかった。
今回の研究は、インフルエンザとその他の医学的に重要なウイルスの研究にとって大きな意味を持っている。インフルエンザワクチンの製造には、卵で培養されたウイルスが一般的に用いられているため、今回の研究で明らかになった宿主による差異がウイルスの進化やワクチンの開発に関係するかどうかは重要な論点である。その検証には、さらなる研究が必要だ。
doi:10.1038/ncomms5816
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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