【生態学】アブラヤシのプランテーションにおける生物多様性の減少
Nature Communications
2014年10月29日
アブラヤシプランテーションにおける生物多様性は、近隣の熱帯雨林にみられる多様性のほぼ半分であることが報告された。農業開発によって自然生息域が消滅したときに生態学的群集がどのように変化するかということが分かれば、土地の持つ商業面と生態学的側面の双方の価値を最大化する道を見つける上で役立つかもしれない。
アブラヤシの商用プランテーションの開発による熱帯雨林の消失は、熱帯における最も急激な土地利用変化の1つである。この変化が生物多様性に与える影響の規模についてはよく分かっていないが、生態系の機能全般に悪影響を及ぼすと推定されている。こうした影響を評価する1つの方法では、代謝エネルギーの流れが測定される。代謝エネルギーとは生態系を流れる熱エネルギーのことであり、これは一般に太陽エネルギーを吸収する植物から始まって、植物を餌とする草食動物を経由し、食物連鎖の頂点に位置する捕食者へと移行し、最終的には細菌などの分解者へと至る。代謝エネルギーは(例えばエネルギーが体熱や放射熱へと変換されることで)ある程度は失われるが、エネルギーの大規模な消失は生態系の機能の低下を意味する。
Ulrich Broseたちは、インドネシアの多様な土地利用タイプにおける無脊椎動物群集を対象とした調査で、アブラヤシプランテーションにおける生物多様性が、ゴムノキの商用プランテーションにおける生物多様性より低く、また自然林と比較して種の数がほぼ半分であることを明らかにした。そして個々の生息域における代謝エネルギーの流れを計算した結果、アブラヤシのプランテーションにおける食物網の効率が自然林の半分に満たないことが判明した。以上の結果は、種の減少が、生態系機能の直接的かつ比例的な喪失につながりうることを意味する。ゴムノキプランテーションでもエネルギーの流れの低下は見られるものの、ゴムノキの商業利用は、商業用林地の、より生態学的に有用な利用であるとBroseたちは考えている。
doi:10.1038/ncomms6351
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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