【マイクロロボティクス】「微小なホタテガイ」と呼ばれる人工遊泳体の開発
Nature Communications
2014年11月5日
速さを変えて殻を開閉することによって粘性流体(粘性の高い液体)をかき分けて進む「マイクロ・スキャロップ(微小なホタテガイ)」と呼ばれる人工の微小遊泳体についての報告が、今週掲載される。このデバイスは、往復運動(ホタテガイの殻の開閉の繰り返し)による遊泳の初めての実験的実証であり、生物医学的流体や生体組織の中を移動できる微小遊泳体の作製を簡素化できる可能性もある。
微小遊泳体は、薬物送達、診断プローブやその他さまざまな生物医学的作業に利用できる可能性がある。ところが、ほとんどの生体液は、非ニュートン流体(ストレスに応じて粘度が変化する液体)であるため、こうした液体をかき分けて進むデバイスの設計が課題となっている。これまで、細菌の鞭毛の回転運動に着想を得たデバイスが、生体液中で人工の微小遊泳体を推進するために用いられることが一般的だったが、モーターの部分が複雑だった。
今回、Peer Fischerたちは、2枚のシリコン重合体の殻を1つの蝶番でつないだマイクロ・スキャロップという簡素な微小遊泳体を設計、作製した。それぞれの殻には微小希土類磁石が取り付けられており、外部磁場をかけて磁石と相互作用させることで、それぞれの殻を動かしている。マイクロ・スキャロップは、素早く殻を開いてからゆっくりと殻を閉じたり、あるいはゆっくりと殻を開いてから素早く殻を閉じたりすることによって、2枚の殻の間の液体の粘度を突然変化させることで、正味の推進力を得る。Fischerたちは、この機構が、生体液中で用いる人工の微小遊泳体を設計する際の一般的な仕組みになるのではないかと考えている。
doi:10.1038/ncomms6119
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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