【創薬】マラリア原虫を破裂させる新種の化合物
Nature Communications
2014年11月26日
前臨床研究で強力な抗マラリア作用が実証された新種の化合物についての報告が、今週掲載される。この化合物は、マラリア原虫が自らの細胞内のナトリウム濃度を適正に維持する能力に影響を及ぼし、水分の過剰な摂取を引き起こす。その結果、マラリア原虫は破裂する。
マラリアを引き起こすPlasmodium属原虫は、ヒトの赤血球の中で増殖し、カを介してヒトからヒトへ感染する。ヒトに感染した原虫は、宿主の赤血球の膜を変化させて、より多くの栄養素が赤血球に取り込まれるようにする。これが引き金となって、赤血球内のナトリウム濃度が上昇する。ところが、原虫は、ナトリウムを体外に排出するPfATP4タンパク質のおかげで、自らの体内のナトリウム濃度を低く抑えている。このプロセスに影響を及ぼすのが、スピロインドロンという新種の抗マラリア化合物で、現在、臨床試験が実施されているが、マラリア原虫の薬剤抵抗性という問題の発生で、新種の治療薬の探索が極めて重要になっている。
Akhil Vaidyaたちは、別の種類の化合物であるピラゾールアミドがナトリウムの排出を阻害して、Plasmodium属原虫の体内のナトリウム濃度を上昇させることを報告している。その結果、原虫は水分を過剰に摂取して細胞が膨張し、最後には破裂した。ヒト赤血球を移植されたマウスを用いた研究では、ピラゾールアミドが、マウスにおける原虫の増殖を強力に阻害し、1日1回の経口投与で原虫が急速に除去された。また、ピラゾールアミドの継続的投与を行って抵抗性を誘発する実験では、十分な抵抗性を有する原虫が出現する頻度が非常に低いことが明らかになった。
今回の研究結果で、Plasmodium属原虫のナトリウム収支を治療標的にすることが新しい抗マラリア薬の有望な開発手法であることが確認された。ピラゾールアミドの分子標的を正確に突き止め、ピラゾールアミドを有効な抗マラリア薬として開発できるかどうかを見極めるためには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms6521
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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