【微生物学】鉄のように強靭なコンドルの腸
Nature Communications
2014年11月26日
コンドルの腸内マイクロバイオームの解析が初めて行われ、その結果についての報告が、今週掲載される。コンドルの腸内微生物叢に多く見られたのは、他の脊椎動物に対して広範に病原性を持つクロストリジウム属とフソバクテリウム門の細菌で、腐りかけの肉を常食することに対する適応によってそうなった可能性が高い。
脊椎動物の体内にいる微生物は、宿主が死ぬと、直ちに宿主を分解し始める。これらの微生物は、宿主組織を分解する際に毒素を分泌するため、宿主の死骸は、ほとんどの動物にとって有害な食料源と化す。この初期分解過程は、コンドルが毒素にさらされる危険を高めるが、皮膚の硬い死骸をあさって食べるために必要なものと考えられている。そして、コンドルは、そうした死骸の内部をあさるために、頭部を腐りかけの獲物の体腔に直接差し込む。その結果、コンドルの頭頸部は病原性細菌にさらされる。
今回、Michael Roggenbuck、Lars Hansen、Gary Gravesたちの研究グループは、こうした毒素に対するコンドルの耐性について解明するため、最も広範囲に生息する2種(クロコンドルCoragyps atratusとヒメコンドルCathartes aura)の顔面皮膚と後腸(大腸)のマイクロバイオームの特徴を調べた。顔面皮膚のスワブによって検出された被食種のDNAは、ほとんどのコンドルの腸試料で完全に分解されていた。これは、コンドルの胃腸管内の化学的な状態が極めて苛酷なことを示している。また、酸性になっているコンドルの胃腸管が、腐りかけの死骸から摂取されるおそれのある微生物の強力なフィルターとして機能し、その結果、後腸の微生物叢がクロストリジウム属とフソバクテリウム門の細菌で占められていることも明らかになった。これらの微生物は、この過酷な状態で生き残るように適応したと考えられ、腐肉をさらに分解することで、コンドルに利益をもたらすこともできる。これは、特殊化した宿主と微生物の協調関係の一例である可能性がある。
doi:10.1038/ncomms6498
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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