【遺伝子治療】新生児心筋症の治療法としての有効性
Nature Communications
2014年12月3日
新生児肥大型心筋症(HCM)の長期遺伝子治療がマウスモデルにおいて初めて成功したという報告が、今週掲載される。肥大型心筋症は遺伝性心疾患の中で最も患者数が多く、500人に1人の割合で生じると推定されている。
肥大型心筋症は、心筋の構成要素をコードする遺伝子の変異を原因とする。この疾患は、若年層成人、特に運動選手の心臓突然死を引き起こすことがあり、重度の収縮機能障害や心不全へと進行する患者もいる。新生児の場合には、生後1年以内に収縮性心不全へと急速に進行し、死亡することがある。
今回、Lucie Carrierたちは、ヒト新生児肥大型心筋症に似た症状を示すように遺伝子工学的に作製されたマウスに対して、長期遺伝子治療が有効なことを明らかにした。変異していない遺伝子の情報をマウスの心臓細胞に送達するように遺伝子操作されたウイルスの単回投与を行った実験で、34週間の観察期間中、肥大型心筋症の症状が発現しなかったのだ。また、この治療法は、肥大型心筋症の発症に関与すると考えられる変質タンパク質を発生させる変異型mRNA種の産生を抑制するという結論も得られた。
現在のところ、重度の新生児肥大型心筋症は心臓移植以外の方法では治療できないが、今回のマウスの研究で得られた知見は、遺伝子治療が現実的な治療法となる可能性を示唆している。ただし、この治療法をヒトに適用した場合の安全性と有効性については、さらなる研究によって明らかにする必要がある。
doi:10.1038/ncomms6515
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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