【生態】真菌を使って細菌食性の線虫に対して防衛する細菌
Nature Communications
2014年12月17日
細菌の代謝産物の1つである尿素には、特定の土壌真菌の生活様式を変えて、線虫を捕食させる作用があるという報告が、今週掲載される。今回の研究は、土壌細菌が尿素を放出して真菌を自らの利益のために「動員」し、細菌食性の線虫を駆除するという戦略が存在している可能性を示唆している。
ある種の真菌は、特殊化した細胞構造(「わな」)を形成して、線虫を摂取する。そうした真菌は、通常、溶存有機物質を餌としているが、特定の線虫が近づくと、線虫から放出される特徴的な化合物(アスカロシド)を認識し、それに応答してわなを形成し、近くにいる線虫を食べるようになる。ところが、わなは、ウシの糞に含まれる未知の化合物に応答して形成されることもある。
今回、Ke-Qin Zhangたちは、この未知の化合物の少なくとも一部がウシの糞に生息する数々の細菌を起源としている可能性があるという仮説を提示している。Zhangたちは、細菌から放出された代謝産物を解析し、その代謝産物の1つである尿素が真菌のわなの形成を誘導すること、そして、ウシの糞に生息する特定の細菌が、尿素の生成と放出を盛んに行うことを発見したのだ。また、尿素が引き金となってわなが形成される機構が、アスカロシドが引き金となってわなが形成される機構とは異なることも判明した。今回の研究は、細菌と真菌の相互作用を示唆しているが、この関係を確かめ、その中身を明確にするためには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms6776
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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