【古生物学】脊椎動物の視覚の進化に新たな手がかり
Nature Communications
2014年12月24日
視覚系の桿体と錐体、受容体の化石が初めて発見されたという報告が、今週掲載される。これは、3億年前に生息していた魚類Acanthodes bridgeiの化石であり、こうした視覚受容器が、脊椎動物の眼において少なくとも3億年間保存されており、A. bridgeiが色覚を有していた可能性が示されている。
脊椎動物における視覚の進化は、動物の生態史上の重要テーマだ。ところが、化石節足動物の石灰化した水晶体を除けば、視覚系の他の部分は、通常、化石記録に保存されない。眼や脳の軟組織は、死んでから数日後に急速に腐敗するからだ。
今回、田中源吾たちは、石炭紀後期のハミルトン層(米国カンザス州)から出土したA. bridgeiという魚類の化石を調べた。A. bridgeiは、現生有顎魚類の最終共通祖先で、汽水域の非常に浅いところに生息していたと考えられている。このA. bridgeiの化石には、当時の体色、形状とユーメラニン(光を吸収する網膜色素)が保存されていた。
この化石には、眼の組織も保存されており、化石における鉱化した桿体と錐体の初めての記録となった。この化石の眼に桿体と錐体とメラニン色素が存在していることは、網膜運動活動(現生魚類に見られる光依存性の視覚、つまり、錐体による昼間視と感度の高い桿体による薄明視)が3億年前にすでに存在していたことを意味する。また、錐体の存在は、3億年前に生息していた魚類A. bridgeiが色覚を有していた可能性を示しているが、その証明にはオプシンという光受容体タンパク質の発見という決定的な証拠が必要だ。
doi:10.1038/ncomms6920
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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