Research Press Release
抗生物質抵抗性を持つ結核菌の台頭
Nature Genetics
2015年1月20日
結核菌の多剤抵抗性の進化的起源と遺伝的基盤の解析が行われた。世界では毎年およそ150万人が結核で命を落としている。結核感染の原因菌であるMycobacterium tuberculosisの特定の系統株が複数の抗生物質に対する抵抗性を獲得し、結核が多く見られる国々で深刻な脅威となっている。この多剤抵抗性の拡大は、もっぱらM. tuberculosisの北京系統株によって引き起こされている。
今回、T Wirthたちは、北京系統と多剤抵抗性の進化過程を解明するため、99か国から集められた4,987の分離株の遺伝的構成を解析し、110株について全ゲノム塩基配列解析を行った。その結果、過去200年間に北京系統の個体数が、産業革命、第一次世界大戦など複数の時期に急増し、抗生物質の利用が増えた1960年代にはそれが減少したことが判明した。また、Wirthたちは、多剤抵抗性と最も関連している北京系統の2株のユーラシア全土での拡大が旧ソ連邦の公衆衛生制度が崩壊した1990年代前半に端を発していることを明らかにし、北京系統の多剤抵抗性に寄与した可能性のある15の遺伝子を同定した。
doi:10.1038/ng.3195
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