【インフルエンザ】有効で柔軟な新しい治療介入法
Nature Communications
2015年2月11日
抗体を用いたインフルエンザ感染の治療薬が、既存の抗ウイルス薬に抵抗性をもつウイルス株に有効に働く可能性のあるという報告が、今週掲載される。今回の研究では、詳細な解析によってインフルエンザウイルスの表面上に新しい構造が発見され、マウスモデルの実験で、この新構造に抗体の断片が結合すると致死的なH1N1感染が起こらなくなることが明らかになった。H1N1は、2013~2014年のインフルエンザ流行期に米国で猛威を振るったインフルエンザウイルス株だ。
ワクチン接種は、今でもインフルエンザ感染の主たる防御手段だが、毎年の防御レベルは、次のインフルエンザ流行期に猛威を振るうウイルス株の予測の正確さによって変動する。これまでにノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザなどの抗ウイルス薬)の有効性が証明されているが、薬剤抵抗性の発生があるため、インフルエンザ感染の治療薬の開発は、未解決の課題として残っている。
今回、Maryna Eichelberger、James Stevensたちの研究グループは、新しい抗体(CD6)を作製し、この抗体が、ウイルス粒子表面上の高度に保存された領域を介してインフルエンザウイルスと結合することを明らかにした。CD6がH1N1感染の予防に有効なことは実験によって明らかになっており、この抗体の分子認識モードからすると、ウイルスが抵抗性を獲得することは、複数の同時変異が必要となることもあって、非常に難しいと考えられている。
今回の研究は、今後の大流行と戦う上で極めて重要な役割を果たすと考えられる抗体を用いた有効で柔軟なインフルエンザ治療薬の開発を促進する新しい重要な考え方を示しており、インフルエンザ薬の研究に重大な影響を与える可能性がある。
doi:10.1038/ncomms7114
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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