北米北東岸での極端な海水準上昇
Nature Communications
2015年2月25日
北米北東岸での極端な海水準上昇現象の1つの原因が海洋内部の力学であるとする論文が、今週掲載される。この新知見は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を一因とする海洋循環の継続的な弱まりによって極端な海水準上昇現象の頻度が今後高まる可能性のあることを示唆している。
極端な海水準は気候変動の最大の影響の1つであることが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって示されている。暴風雨と津波に関連する現象については多数の研究報告があるが、海洋内部の力学の結果生じる現象はあまり注目されていなかった。今回、Jianjun Yinたちは、検潮器記録(海水準の変化の記録)を分析し、2009~2010年に北米北東岸で850年に一度という前例のない海水準上昇現象があったことを明らかにした。この時期にニューヨーク市北部沿岸で海水準が最大128 mm上昇したのだ。
Yinたちは、観測結果と最先端の気候モデルによる数値シミュレーションを組み合わせて、大西洋南北鉛直循環(AMOC)が30%弱まったことが、極端な海水準上昇現象に大きな役割を果たしたことを明らかにした。Yinたちは、さらに100年間にわたって大気中の二酸化炭素濃度が年1%上昇するという気候モデル実験を行い、AMOCのさらなる弱まりが生じることを明らかにした。この海洋循環の弱まりは、海洋の熱膨張、陸氷の融解、大気変動とともに、今後、北米の人口密度の高い沿岸域で極端な海水準上昇現象の発生頻度を高める可能性が高い。
doi:10.1038/ncomms7346
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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