【気候科学】電気自動車への転換による都市部のヒートアイランド効果の緩和
Scientific Reports
2015年3月19日
従来の自動車を電気自動車に置き換えれば都市部の気温が下がるかもしれないことを示唆する研究結果についての報告が、今週掲載される。さらに、電気自動車への置き換えで自動車からの熱の排出が減れば、各家庭や事業所などのエアコンによるエネルギー消費も減り、従って二酸化炭素(CO2)排出量が減る可能性もある。
電気自動車の使用が局所的・大域的規模の両方において気候変動の問題への対策となり得るかどうかを巡っては議論がある。電気自動車は、局所的には二酸化炭素排出量が少ないものの、その製造工程による環境汚染は従来の自動車より深刻だからだ。今回、Canbing Liたちは、従来の自動車を電気自動車に置き換えることのさらなる利点を発見した。こうした利点は、電気自動車への置き換えの加速を後押しするものかもしれない。同じ距離で比較した場合、電気自動車から排出される熱の量は、従来の自動車よりはるかに少なく、これによって夏の都市部におけるヒートアイランド効果(多くの都市の気温が周辺の農村部より高くなる現象で、人間の活動を原因とする)が軽減される可能性がある。Liたちは、中国の北京を例に用いて、従来の自動車を電気自動車に置き換えることでヒートアイランド効果の強度がほぼ摂氏1度低下すると推定し、その結果エアコンによるエネルギー消費量の減少により、1日のCO2排出量が1万686トン減少すると試算している。
ただし、都市部のヒートアイランド効果に影響を及ぼす要因はいくつか存在しており、今回の研究でその全ては検討されていないことをLiたちは指摘している。例えば、エアロゾル汚染の減少がヒートアイランド効果の強度に及ぼす影響に関しては相反する研究結果が発表されている。従来の自動車を電気自動車に置き換えることの長所と短所を比較評価する際には、そういった要因を考慮する必要があるかもしれない。
doi:10.1038/srep09213
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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